揚げ物

揚げ物とは・・・

揚げ物

揚げ物(揚物・揚げもの・あげ物・揚もの・アゲもの・揚げモノ・あげモノ・アゲモノ・あげもの・Agemono)は、
魚介類や肉類、野菜類、山菜類、キノコ類、豆腐、餅などを、そのまま、または小麦粉や片栗粉、卵、水等で作る「衣」(揚げ衣)をつけて、およそ150度~190度前後(食材や目的の調理により異なる)に熱した油に入れて食材を加熱調理する方法。またはそうして作る料理のこと。

食材を適温に熱した油に入れることで、短時間のうちに食材(の表面もしくは衣)が熱せられ、水分が急激に蒸発、熱で表面のタンパク質などが変化して硬化、また食材の中の水分が蒸発した所に、熱い油が入り込んで水分と油の交換が起こり(水と油の交代現象)、外側は「かりっ」「さくっ」「ぱりっ」とした食感に、一方で内側は蒸された状態になって柔らかな食感を保ったまま加熱される(食材や加熱時間等により多少の差がある)。

高い温度の油で揚げることにより、短時間のうちに表面が硬化、内部の水分や香りなどが閉じ込められることで、「茹でる」「煮る」などの調理法と比較して「うまみ成分」が外に逃げ出しにくいことから、「食材本来」の味を味わうことができる調理法の一つとされる。揚げる際には、少し低い温度で揚げてから、最後に高温でからっと揚げる「二度揚げ」なども行われる。

天ぷら

衣などをつけずに、食材をそのまま揚げたものを「素揚げ」、衣をつけて揚げたものを「衣揚げ」と呼び、さらに衣として用いる材料などの違いにより、「天ぷら(天麩羅・天婦羅)」「唐揚げ(空揚げ)」「フライ」「カツ」「変わり揚げ」などと呼ぶ。

「衣揚げ」の衣の材料としては、卵、水、小麦粉、片栗粉のほか、パン粉などが用いられる。また「変わり揚げ」の衣として、胡麻や海苔、米粉、あられ、素麺、そば、などが用いられ、食材に直接まぶして、もしくは天ぷら衣などに加えて用いられる。

食材に衣をつける際は、粉をそのまま食材の表面に「はたく」、もしくは水などで溶いて「衣」を作ってから、または「溶き卵」や「下粉」をまぶしてから食材となる魚介類や野菜等に衣をつける。

食材に串を刺して揚げたものを「串揚げ」と呼ぶほか、食材の種類や揚げ方などにより、「精進揚げ(本来的には、「天ぷら」がアナゴやエビなどの魚介類を揚げたものを指し、ナスやカボチャなどの野菜類を揚げたものは「精進揚げ」と呼ばれて区別されていたとされる。)」「かき揚げ(数種類の食材をまとめて揚げたもの)」「磯辺揚げ(海苔を用いた揚げ物)」「はさみ揚げ(食材に切り目を入れその間に別のものを挟んでから油で揚げる)」などの呼び名がある。

レンコンのはさみ揚げレンコンのはさみ揚げ

「天ぷら」と「唐揚げ」と「フライ」「カツ」の違い

「天ぷら(天麩羅・天婦羅)」と「唐揚げ(空揚げ)」、「フライ」、「カツ」の主な違いは、衣に用いる材料。「天ぷら」には、小麦粉(水、卵、小麦粉)、「唐揚げ」には片栗粉、「フライ」には、パン粉(小麦粉、卵、パン粉)が用いられる。「カツ」は主にフライの中でも肉類を揚げたものに使われる場合が多い(トンカツ・チキンカツ、牛カツなど)が、えびを用いた「エビカツ」や、マグロを用いた「マグロカツ」、魚のすり身を揚げた「フィッシュカツ」というものもある。

揚げ物になる主な食材と揚げ物の種類

「油で揚げる」というシンプルな調理工程と「大抵の食材は揚げると美味しく頂ける場合が多い」といった理由から、「揚げ物」は日本各地の様々な地域の家庭や店で色々な形で調理され、食べられており、「揚げ物」に用いられる食材や味付け、調理法も多種多様。食材に合わせて、「天ぷら」「唐揚げ」「フライ」「カツ」と調理法が適宜選択される場合もあるが、海老などのように「天ぷら」にも「フライ」にもなる食材もある。また、西日本では、魚のすり身を揚げたものも「天ぷら」と呼ぶ地域も多いなど、場所や人により、呼び名が異なったり、同じ呼び名でも異なるものを指すこともある。

「揚げ物」(全般)に用いられる主な食材

魚介類:エビ(車エビ、大正えび、ブラックタイガー(ウシエビ)、アマエビ、桜海老、白エビ等)、イカ(スルメイカ、ケンサキイカ、モンゴウイカ、ホタルイカ等)、貝類(はまぐり、ホタテ、アオヤギ、牡蠣、小柱(バカガイ)等)、タコ、アジ、イワシ、サンマ、サバ、タラ、サケ、マス、サヨリ、キス、穴子、カツオ、マグロ、ハモ、ハゼ、フグ、カレイ、ヒラメ、シラウオ、メヒカリ、シシャモ、シャコ、ウツボ、ギンポ、ノドグロ(アカムツ)、カサゴ(ガラカブ、アラカブ)、鯛、鰆、アンコウ、蟹、アユ、イワナ、ヤマメ、ワカサギ、ナマコ、海藻類(海苔、アオサ、モズク、ワカメ等)白身魚や青魚のすり身、ウニなど。タラやフグの白子、魚卵、骨、エビの頭、アラ、皮など。

肉類:牛肉、豚肉、鶏肉、鹿肉、イノシシ肉、馬肉、さらに鶏皮、モツ、スジ(スジ肉)など。

野菜類・根菜類:玉ねぎ、ピーマン、人参、蓮根(レンコン)、さつま芋、山芋、ジャガイモ、茄子、ネギ、南瓜(かぼちゃ)、ごぼう、ししとう、コーン(トウモロコシ)、にんにく、生姜(紅生姜)、オクラ、ブロッコリー、カリフラワー、パプリカ、アスパラガス、ズッキーニ、トマト、大葉、三つ葉、パセリ、枝豆など。

山菜類:フキノトウ(蕗の薹)、タラの芽、ワラビ、カンゾウ、ウルイ、ウコギ、コシアブラ、葉ワサビ、ヨモギ、トリアシショウマ、コゴミ、ゴマナ、シオデ、イタドリ、アザミ、山うど、山フキ、ネマガリダケ(根曲り竹)、タケノコ(筍)、ツクシ、シシウド、行者にんにく、リョウブ、ニリンソウ、ミツバアケビ、十文字シダ、ニワトコ、ユキツバキ、ユキノシタ、ウバユリ、カタクリ、セイヨウタンポポ、ウルイ(ウリッパ、アマナ、ギンボ、山かんぴょう)など。

キノコ類:マイタケ(舞茸)、しめじ、シイタケ(椎茸)など。

その他:豆腐、餅、煎餅、パン、まんじゅう、コンニャク、餡、ビスケット、アイスクリーム、春雨、麩、玉子、もみじ、干し柿、銀杏、リンゴ、カステラ、チーズなど

天ぷらの盛り合わせ
天ぷらの盛り合わせ(銀杏の天ぷら、さつま芋の天ぷら、ヨモギの天ぷら、舞茸の天ぷら)
天ぷら

天ぷら

天ぷら

主な揚げ物 揚げ物の種類とそれぞれの「揚げ物」に用いられる食材

天ぷら(主な食材と呼び名)

◇魚介類:海老(エビ天・エビのてんぷら / 車えび、大正えび、ブラックタイガー、芝エビ、シロエビ、桜エビ、伊勢エビ等)、穴子(あなご天・穴子天)、きす(きす天)、はぜ(はぜ天)、いか(いか天)、フグ、シラウオ(白魚)、貝類(ハマグリ、ホタテ、アサリ、青柳など)、ぎんぽ、海苔、ウニ、白子(タラ等)など。

◇肉類:鶏肉(かしわ天)

◇野菜・根菜類:茄子(茄子天)、南瓜(かぼちゃ天)、さつま芋、人参、玉ねぎ、レンコン(蓮根)、ごぼう(ごぼう天)、春菊、シソ(大葉)、三つ葉など。

◇山菜・キノコ類:タケノコ、フキノトウ、タラの芽、ヨモギ、ほか多種多様な山菜。マイタケ、シイタケ、シメジなど。

◇その他:アイスクリーム、ちくわ、リンゴ、干し柿、紅生姜、らっきょう、梅干し、寿司、ビスケット、モミジの葉など。

もみじの天ぷらもみじの天ぷら

唐揚げ(主な食材)

鶏(もも肉、ムネ肉、手羽先、ささみ、砂肝等)、エビ(川エビ、甘エビ、シロエビ、桜エビ等)、カレイ、カサゴ、ワカサギ、イカゲソ、うつぼ、タコ、マグロ、イソギンチャク、ナマコ、蟹、ゴボウ、山芋、銀杏など。

鶏の唐揚げ
鶏の唐揚げ
がらかぶの唐揚げがらかぶの唐揚げ(かさごの唐揚げ)(熊本)

フライ(主な食材)

エビ、鯵、イワシ、サンマ、牡蠣(かき)、鮭、タラ、マス、レバー(レバーフライ)、ホタテ、イカ、玉ねぎ、ジャガイモなど。

ホタテのフライホタテフライ

海老フライ海老フライ

カツ(主な食材)

ハムカツ
ハムカツ

豚肉(豚カツ)、牛肉(牛カツ)、鶏肉(鶏カツ、チキンカツ)、ひき肉(メンチカツ)、ハム(ハムカツ)、海老(エビカツ)、レバー(レバーカツ)、鮪(マグロカツ)、イカ(イカカツ)、クジラ(鯨カツ)など。「串カツ」は、肉や野菜などの食材を竹串に刺して衣をつけて揚げたもの。

その他の色々な揚げ物

磯辺揚げ

海苔を用いた揚げ物。

かき揚げ

かき揚げかき揚げ

貝柱や小さなエビ(桜エビや芝エビ等)、三つ葉など、二種類以上の主に小さくて細かな食材をまとめて揚げたもの。

変わり揚げ

衣にあられやソバ、素麺などを用いたもの。

香り揚げ

シソや海苔、山椒など、香りの豊かなものを食材にまぶしたり、衣に混ぜて揚げたもの。

竜田揚げ

醤油やみりん、日本酒などで下味をしっかりつけてから衣をつけて油で揚げたもの。鶏の竜田揚げ、マグロの竜田揚げなど。

南蛮漬け

小鯵などに衣をつけて油で揚げてから、タマネギなどが入った甘酢に漬けたもの。

チキン南蛮

鶏肉に衣をつけて油で揚げてから甘酢に漬けたもの。タルタルソースが添えられることも多い。

とり天

大分県の郷土料理。醤油やニンニクなどで鶏肉に下味をつけ、小麦粉、卵、水で作る衣をつけて油で揚げたもの。

長崎天ぷら

主に長崎で伝統的に作られ食べられている揚げ物。「天ぷら」と呼ばれるが、小麦粉、卵、水のほか、醤油、塩、砂糖、酒などが入っており、衣にも味がついているのが特徴。

沖縄の天ぷら

沖縄で食べられている天ぷら。味がついた衣を厚めにまとわせて油で揚げる。おやつや軽食としても食べられている。

サーターアンダーギー(サーターアンダギー)

サーターアンダーギーサーターアンダーギー

小麦粉や砂糖、卵などで作る生地を油で揚げたもの。沖縄の伝統的な郷土菓子として知られる。

フリッター

小麦粉に卵黄と水か牛乳を入れてさらに卵白を泡立てたものを混ぜた衣を、肉や魚、野菜、果物などにまとわせ油で揚げたもの。洋風の揚げ物。砂糖が入ることもあり、特にバナナなどの果物を揚げたものは、おやつ、デザートとして食べられることも多い。

イカメンチ

イカメンチイカメンチ

青森県の津軽地方の郷土料理。イカを叩いてミンチにしたものに玉ねぎなどを混ぜて形を整え油で揚げたもの。

コロッケ

高岡コロッケ

茹でたジャガイモやひき肉などで作るタネの形を小判型に整えてから、小麦粉、卵、パン粉をつけて油で揚げたもの。日本の洋食の一つ。マッシュしたカボチャや蟹が入ったホワイトソースなども用いられる。「三島コロッケ」や「高岡コロッケ」「博多明太子コロッケ」「清水もつカレーコロッケ」など、地域や食材の名前が付けられた「ご当地コロッケ」もある。

揚げ餃子

餃子を油で揚げたもの。

大学いも

大学いも

さつま芋を油で揚げてから黒砂糖などで作る蜜を絡ませたもの。

かりんとう

小麦粉に砂糖や重曹などを加えて作る生地を棒状にしてから油で揚げ、砂糖や黒砂糖などで作る蜜をまぶして乾燥させて固めた菓子。

揚げおかき・揚げあられ

餅を小さく分けてから油で揚げたもの。

ザンギ

ザンギザンギ

北海道釧路地方の郷土料理。鶏肉に醤油やニンニクなどで下味をつけてから、衣をつけて油で揚げたもの。

油揚げ(薄揚げ)・厚揚げ

豆腐を薄く切ってから油で揚げた「油揚げ」は江戸時代から食べられている伝統的な日本の揚げ物の一つ。地域によっては「薄揚げ」「お揚げ」などと呼ぶ。厚めに切って油で揚げたものは「厚揚げ」と呼ぶ。地域や店により呼び名や厚みなどは異なり、「油揚げ」と呼ばれていても厚さ数センチメートル以上、大きさも一辺の長さが十センチメートルを超えるような大きくて分厚いものもある。

がんもどき


がんもどき(飛竜頭・ひりゅうず・ひりょうず)

潰した豆腐に細かく切った人参、レンコン、ごぼうなどを混ぜて作る生地の形を整えてから油で揚げたもの。

辛子蓮根(からし蓮根)

辛子蓮根辛子蓮根

熊本県の郷土料理。江戸時代から作られ食べられているといわれる伝統のある食べ物。レンコンの穴に粉辛子と、味噌、蜂蜜などを混ぜ合わせて作ったものを詰め、衣をつけて油で揚げたもの。

揚げしんじょ・しんじょ揚げ

エビや魚、鶏肉などをすり身にしたものに、卵白やヤマノイモ、片栗粉などを加えて形を整え油で揚げたもの。

揚げ出し豆腐

揚げ出し豆腐揚げ出し豆腐

豆腐に片栗粉などの衣をつけて油で揚げてから出汁をかけたもの。

せんざんき

愛媛県今治の郷土料理。鶏肉に醤油、日本酒、にんにく、生姜などで下味をつけてから衣をつけて油で揚げたもの。

ハトシ

ハトシハトシ

長崎のご当地グルメ。はさみ揚げの一種。エビなどのすり身をパンで挟み、油で揚げたもの。

がね・がね揚げ

がねがね

さつま芋を細く切り、衣をつけてまとめたものをかき揚げにしたもの。鹿児島や宮崎、熊本などで食べられている郷土料理。

薩摩揚げ・揚げかまぼこ

薩摩揚げ

魚肉のすり身を油で揚げたもの。細切りにしたニンジンなどの野菜が入ることも多い。鹿児島や沖縄では「つけ揚げ」「チキアギ」などと呼ばれるほか、関西以西では「てんぷら」と呼ばれることも多い。また、赤天、骨天、飫肥天など日本各地に様々な食材を用いて作られる、色々な呼び名や味、形の「揚げかまぼこ」がある。

飫肥天飫肥天(おびてん)

揚げ物の油

揚げ物用の油として、揚げ物の種類、食材の種類、地域、家庭、店、人などによって様々なものが用いられるが、主に、菜種油(白絞油)、ごま油(胡麻油)、大豆油、コーン油、米油、綿実油、オリーブ油、ショートニングなどの植物性の油脂、ラード、ヘット、バターなどの動物性油脂が用いられる。椿油を産する伊豆大島などでは椿油が用いられることもある。

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