蒸す

蒸すとは・・・

蒸す(むす・Musu)は、
食材や料理に火などの熱源を直接当てずに、沸かした湯などの蒸気を用いて加熱調理すること。「煮る」「焼く」「炒める」「揚げる」「茹でる」「煎る(炒る)」などと並ぶ加熱調理法の一つ。蒸かす(ふかす)とも。

「蒸す」際には、蒸籠(せいろ)などの蒸し器を用いるか、または鍋(片手鍋、両手鍋、圧力鍋、フライパン、中華鍋等)などを用いる。下部に、蒸気用に水を入れて加熱して蒸気を発生させ、その上に肉、野菜、魚、きのこなどの食材、もしくは料理の材料(出汁、卵、野菜、肉、魚、きのこなどの材料と調味料等)を入れた器(皿、丼、茶碗、土瓶など)を入れて蓋をし、蒸しあげる。鍋に器を入れ、器の半分ほどの高さにまで湯を入れて蒸す方法(直蒸し・じか蒸し)もある。食材や料理によって蒸す時間(蒸し時間)は様々で、数分で出来るものから数十分かかるものまである。

薪や炭を燃やしたり、ガスの火、電熱などで蒸し器や鍋を加熱して「蒸す」ほかに、温泉地などで水蒸気や湯気などを用いて調理する蒸し方もあり、「地獄蒸し」などと呼ばれ、親しまれている。温泉宿で食事として提供されるほか、地元の人々、湯治客、観光客が使えるような「蒸し釜」がある場所もあり、そうした場所では、各自が持参したり近くで購入した食材を各々、好みの時間「蒸す」ことにより、料理(蒸し料理)を作れるようになっている。

日本料理(和食)と「蒸す」調理法

「蒸す」調理法は、食材の味や香りを大切にする日本料理では、重要かつ高頻度に用いられる調理法であり、様々な料理、食べ物、菓子が「蒸す」ことによって作られる。「~の蒸し物」「~蒸し」「蒸し~」といった料理、食べ物のほか、かまぼこや納豆なども蒸して作られる食べ物であり、味噌や醤油、酒、茶などが作られる際にも、原料となる大豆や米、麦、茶葉などを「蒸す」工程が欠かせない。また、まんじゅうなど、地域の菓子、郷土菓子、昔ながらの菓子なども蒸すことによって作られるものが多い。

茶碗蒸し茶碗蒸し

蒸しガニ蒸しガニ

ちまき

主な蒸し料理

茶碗蒸し
土瓶蒸し
蒸籠蒸し(うなぎのせいろ蒸しなど)
ちり蒸し
小田巻蒸し
地獄蒸し
酒蒸し(アサリの酒蒸し、ハマグリの酒蒸しなど)
塩蒸し

蒸し雑煮

蒸し野菜(人参、キャベツ、ブロッコリー、アスパラガスなど)
蒸し米
蒸し蟹
蒸し海老
蒸し鮑
蒸しウニ
蒸し魚
蒸し鶏
蒸かし芋(じゃがいも・さつまいも・里芋など)
蒸し茄子
蒸し豆(蒸し大豆、蒸し黒豆、蒸し小豆、蒸し空豆、蒸し枝豆など)
蒸し栗
卵豆腐
豆腐料理(砂子豆腐、松重豆腐(まつかさねとうふ)、苞豆腐(つととうふ)、鹿の子豆腐、空也豆腐(空也蒸し)など)

赤飯
おこわ
ちまき

かまぼこ
納豆

◇蒸し物の料理名
鮭と豆腐の蒸し物
鮭とかぶの蒸し物
鮭ともやしの蒸し物
鮭と蓮根の蒸し物

豆腐とうなぎの蒸し物
豆腐と蟹の蒸し物
豆腐と白身魚の蒸し物
豆腐と海老の蒸し物

鶏肉とかぼちゃの蒸し物
鶏肉とトマトの蒸し物
鶏肉と茄子の蒸し物
鶏肉と蓮根の蒸し物
鶏肉と椎茸の蒸し物

豚肉とキノコの蒸し物
豚肉ともやしの蒸し物
豚肉と小松菜の蒸し物
豚肉とキャベツの蒸し物
豚ばら肉と白菜の蒸し物
豚ばら肉とネギの蒸し物

鱈と蕪の蒸し物
鱈と粟の蒸し物
鱈と青菜の蒸し物

わかめと鰆の蒸し物

ホタテと百合根の蒸し物
ホタテともやしの蒸し物

小松菜と豆腐の蒸し物
鶏肉とキャベツの蒸し物
かぼちゃともやしの蒸し物
ブロッコリーとシラスの蒸し物

たけのこと海老の蒸し物
キャベツと海老の蒸し物
蓮根と海老の蒸し物

賀茂茄子と穴子の蒸し物
はまぐりとタケノコの蒸し物
あさりと春野菜の蒸し物
まつたけとすり身の蒸し物
ブリと長芋の蒸し物

かぶと牡蠣の蒸し物
もずくと牡蠣の蒸し物
サバの蒸し物
塩サバの蒸し物

白菜とはんぺんの蒸し物
いかとセロリの蒸し物

はまぐりの蒸し物
湯葉の蒸し物
大根の蒸し物
白身魚の蒸し物(真鯛の蒸し物、かさごの蒸し物、すずきの蒸し物、太刀魚の蒸し物)
蓮根の蒸し物
長芋の蒸し物
真鯛の蒸し物
ひき肉の蒸し物
冬瓜の蒸し物
豚ヒレ肉の蒸し物

蕪蒸し(かぶら蒸し)
さらさ蒸し(ひらめのさらさ蒸し、サバのさらさ蒸しなど)

飯蒸し(いいむし)
朧蒸し(おぼろむし)
卸し蒸し(おろしむし)
重ね蒸し(かさねむし)
錦秋蒸し(きんしゅうむし)
具足蒸し(ぐそくむし)
けんちん蒸し(巻繊蒸し・けんちんむし)
玉子けんちん蒸し
骨蒸し(こつむし)
鯛の骨蒸し
木の葉蒸し
薯蕷蒸し(じょうよむし)
信州蒸し
新茶蒸し
蕎麦蒸し(そば蒸し)
丹波蒸し(たんばむし)
千草蒸し(ちぐさむし)
東寺蒸し(とうじむし)
道明寺蒸し
土佐蒸し
徳利蒸し(とっくりむし)
鳴門蒸し
南禅寺蒸し
難波蒸し
博多蒸し
羽二重蒸し(はぶたえむし)
豊年蒸し
松葉蒸し(まつばむし)
笹蒸し(笹の葉蒸し)
蕗の葉蒸し(蕗の葉包み蒸し)
朴葉蒸し(ほおばむし)
蓮蒸し(蓮の葉蒸し)
はす蒸し
柏蒸し(柏葉蒸し)
柿の葉蒸し(かきのはむし)
桜蒸し(桜葉蒸し・桜の葉蒸し、桜花蒸し)
百草蒸し(ももくさむし)
養老蒸し

エノハの酒蒸し
エノハの酒蒸し
昆布巻かまぼこ
昆布巻かまぼこ

かまぼこ


赤飯
あん肝
あん肝
蒸し牡蠣
蒸し牡蠣

主な蒸し菓子(蒸して作る菓子)

まんじゅう(焼きまんじゅうや揚げまんじゅうなど蒸さないものもある)
温泉まんじゅう
鬼まんじゅう
酒饅頭
甘酒まんじゅう
田舎饅頭
黒糖饅頭
蒸しパン
いきなり団子
笹団子
みょうがもち(みょうがぼち)
柏餅
桜餅
いばらもち
べこもち
ねりきり
ういろう
りんまん
雲平
小男鹿(さおしか)
かるかん
蒸し羊羹
ちまき(甘いもの)
ゆべし(柚餅子)
鶏卵饅頭
カーサムーチー

ほうじ茶蒸しパン
ほうじ茶蒸しパン

紫芋まんじゅう

麦柏

鬼まんじゅう
鬼まんじゅう

和菓子、郷土菓子として、米粉や小麦粉で作った餅やまんじゅうを、柏の葉や桜の葉、いばらの葉(サルトリイバラの葉)、ミョウガの葉などで包み、蒸したものは日本各地にあり、「柏餅」「柏饅頭(柏まんじゅう)」「桜餅」「いばら餅」「みょうがぼち(みょうがもち)」などの名で「季節の菓子」として親しまれている。また、温泉地には温泉の湯気や蒸気(または沸かした湯)で蒸したまんじゅうが売られている事も多く「温泉まんじゅう(温泉饅頭)」として温泉客向けに売られている。

いばらもち いばらもち
まんじゅうなども蒸して作られるものが多い(薯蕷饅頭) 薯蕷饅頭

卯の花饅頭
甘酒饅頭
からすみからすみ

石臼
道明寺桜餅道明寺桜餅

揚げ物と「蒸す」関係

「天ぷら」や「フライ」などの衣をつけて肉や魚、野菜などを揚げるものも、料理としては「揚げ物」となるが、衣の中では食材が「蒸された」状態になっており、油で揚げながら「蒸す」調理法も同時に行っている。

また、アルミホイルなどに包んで調理する「ホイル包み焼き(ホイル蒸し焼き)」や、多めの塩を用いて、塩で食材を包んだり塩にのせて焼く料理(塩蒸し焼き)も、食材が蒸されるという意味では、蒸し料理の一つともいえる。

ホイル包み焼き
ホイル包み焼き(ホイル蒸し焼き)

「蒸す」ことの利点

シンプルで簡単な調理法であり、食材が調理中に乾燥したりする心配もなく、食材から栄養や旨味が逃げにくい上に、揚げ物や炒めものなどのように余分な脂分を摂取しなくてすむことから、「手軽で美味しくかつ健康的な調理法」の一つとされる。

冷めたご飯を温める

また、冷えたご飯などを温める際にも「蒸す」方法は用いられる。電子レンジがなかった時代に、冷えたご飯などを温める方法の一つとして、茶碗の高さの半分ほど鍋に沸かした湯の中にご飯を茶碗ごと入れて蒸して温める方法も用いられた。焼いたものが冷めた場合に、温める為に再び焼きなおすと乾燥しすぎてパサパサになってしまうなどの欠点があるが、蒸す(蒸かす)場合にはそれがない為、比較的、最初の出来上がりに近い状態に再現できる方法の一つとされる。

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